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伊豆大島にウミガメがやってくる。砂の浜の産卵と黒い砂浜を深掘り

伊豆大島にウミガメがやってくる。砂の浜の産卵と黒い砂浜を深掘り

2026.08.27伊豆大島深掘り伊豆大島ウミガメ砂の浜アカウミガメアオウミガメ伊豆大島の自然伊豆大島観光レンタカー執筆:株式会社bliss(レンタカー事業)

この黒い砂浜に、ウミガメがやってくる。伊豆大島の海と命を深掘り


はじめに|昼間、僕たちが歩いている砂浜。

昼間の砂の浜。

黒い砂の上を歩き、

海を眺め、

写真を撮る。

伊豆大島を旅行する人から見れば、ここは火山島らしい景色を楽しむ海岸です。

でも。

人が帰ったあとの夜。

この浜には、まったく別の目的で海から上がってくる生き物がいます。

ウミガメです。

伊豆大島の砂の浜では、実際にウミガメの産卵が確認されています。

しかも確認されているのは、一種類だけではありません。

アカウミガメ。

そして、

アオウミガメ。

私たちが昼間、何気なく歩いている黒い砂浜。

そこは別の命にとって、

次の世代を残す場所

でもあるのです。


【記事27「砂の浜と野田浜を巡る」/泳ぐだけが、伊豆大島の海じゃない。砂の浜と野田浜、2つの海岸を巡る

砂の浜・野田浜への行き方や、それぞれの海岸の特徴については、前回の記事で詳しく紹介しています。


伊豆大島で、本当にウミガメが産卵している?

しています。

これは「昔そんな話があった」という伝承ではありません。

環境省のモニタリングサイト1000では、全国各地の砂浜でウミガメの上陸や産卵、砂中温度などを継続的に調査しています。

その東京都・伊豆諸島の調査地点の一つが、

間伏海岸。

つまり、私たちが普段呼んでいる砂の浜です。

ここでは、

アカウミガメとアオウミガメ

の産卵が確認されています。

現在も環境省の長期モニタリング対象となっている海岸です。


そもそも、ウミガメはなぜ砂浜に上がるの?

ウミガメは、一生のほとんどを海で過ごします。

でも、卵は海の中では産みません。

産卵期になるとメスが海から砂浜へ上がり、

砂を掘り、

その中へ卵を産みます。

卵は砂の中で成長し、

孵化した子ガメは、自分の力で砂から地表へ出てきます。

そして海へ向かいます。

つまりウミガメにとって砂浜は、

海と陸の境界にある「命のスタート地点」。

普段は海の生き物として見ているウミガメが、次の世代を残すときだけ陸へ上がってくる。

そこに、ウミガメという生き物の面白さがあります。


アカウミガメとアオウミガメ。何が違う?

伊豆大島の砂の浜で確認されている、

アカウミガメ。

そして、

アオウミガメ。

名前だけ見ると、

「赤いカメと青いカメ?」

と思うかもしれません。

でも、体そのものが鮮やかな赤や青をしているわけではありません。

アカウミガメは、大きな頭と強い顎が特徴。

日本の砂浜で産卵する代表的なウミガメです。

一方のアオウミガメは、成長すると海草や海藻などを多く食べることで知られています。

同じ「ウミガメ」でも、

食べるもの。

体の特徴。

海での暮らし方。

産卵の特徴。

少しずつ違います。

そして砂の浜では、その両方が産卵しています。


実は、卵を埋める深さも違う。

環境省の調査を見ると、さらに面白い違いがあります。

砂の浜では、

アカウミガメの卵がある深さを想定した約40cm。

そして、

アオウミガメの卵がある深さを想定した約60cm。

それぞれの深さに温度計を埋めて、砂の中の温度を観測しています。

つまり環境省は、

「ウミガメが来たかどうか」

だけを見ているわけではありません。

卵が置かれる砂の中で、どんな環境が起きているのか。

そこまで継続して調べています。


なぜ「砂の温度」まで調べる必要がある?

ここから、この話は一気に面白くなります。

ウミガメの卵にとって、

砂は単なる布団ではありません。

砂の中の温度が、成長そのものに大きく関係しています。

ウミガメの仲間は、卵が育つときの温度によって、生まれてくる子ガメの性別の割合が変わることが知られています。

環境省の説明では、およそ29℃を境に、温度が高いほどメスが多く、低いほどオスが多くなる傾向があります。

つまり、

砂浜の温度が変われば、次の世代の構成まで変わる可能性がある。

砂浜は、ただ卵を隠す場所ではありません。


そして砂の浜は、「黒い」。

ここで、記事27までの話がつながります。

砂の浜の砂が黒いのは、

伊豆大島が玄武岩質の火山島だから。

火山灰。

火山砂。

細かく砕けた溶岩。

それらが海岸へ集まり、黒い砂浜をつくっています。

黒いものは光を吸収しやすい。

そのため砂の浜では、夏になると裸足では歩けないほど砂が熱くなることがあります。

伊豆大島ジオパークも、砂の浜の黒砂が熱を吸収しやすく、地中温度が高いことを紹介しています。


【既存記事「なぜ伊豆大島の海岸は黒い?」/なぜ伊豆大島の海岸は黒い?黒い砂浜が生まれる理由を火山から深掘り|bliss

黒砂そのものが生まれる仕組みについては、こちらの深掘り記事で詳しく紹介しています。


「暖かい砂=ウミガメに良い」とは限らない。

ここは、とても大切です。

黒い砂は熱を持ちやすい。

ウミガメの卵は砂の中で育つ。

それだけ聞くと、

「だから砂の浜はウミガメの産卵に適しているんだ」

と思うかもしれません。

でも、そこまで単純ではありません。

むしろ現在の調査からは、

砂の中が熱くなりすぎる

という別の問題も見えてきています。

環境省の2022年度調査では、間伏海岸の深さ40cmで、ウミガメの胚が死亡する危険性が高まるとされる33℃以上の状態が、7月下旬から8月上旬に一時的に観測されました。


火山がつくった黒い砂と、ウミガメ。

ここまで見てくると、

伊豆大島らしい一つのつながりが見えてきます。

火山が島をつくる。

火山から生まれた岩や砂が海岸へ運ばれる。

黒い砂浜ができる。

そこへウミガメが上がり、卵を産む。

そして、その黒い砂の温度が、

砂の下の命に影響する。

つまり、

火山の話と、ウミガメの話は別々ではありません。

伊豆大島という場所では、

地質と生き物の暮らしが同じ景色の中でつながっています。


でも、ウミガメの世界は「砂の浜」だけでは終わらない。

ウミガメが砂浜へ上がるのは、産卵のとき。

普段の暮らしの舞台は、

海です。

そして伊豆大島の海では、実際に泳ぐウミガメを見ることがあります。

前の記事で紹介した野田浜でも、アオウミガメとの遭遇記録があります。

2026年8月24日のダイビング記録でも、野田浜でウミガメが観察されています。

砂の浜では、

海から陸へ上がってくるウミガメ。

野田浜では、

海の中を泳ぐウミガメ。


海の中では、また違うウミガメの姿がある

前半では、砂の浜でウミガメの産卵が確認されていること。

そして、黒い砂の温度が卵の発生にも関わっていることまで見てきました。

でも、ウミガメが砂浜へ上がるのは、基本的に産卵のときです。

普段の暮らしの舞台は、

海。

伊豆大島の海でも、海中を泳ぐウミガメに出会うことがあります。

前の記事で紹介した野田浜でも、実際にウミガメとの遭遇記録があります。

砂の浜では、

海から陸へ上がってくるウミガメ。

野田浜では、

海の中を泳ぐウミガメ。

同じ伊豆大島の西側でも、私たちが出会う姿はまったく違います。

【記事27「砂の浜と野田浜を巡る」/泳ぐだけが、伊豆大島の海じゃない。砂の浜と野田浜、2つの海岸を巡る


では、いつウミガメは砂浜へ上がってくる?

ウミガメの産卵は一年中起きるわけではありません。

日本では一般的に、春から夏にかけて産卵シーズンを迎えます。

環境省が各地で行っている保全でも、主にこの時期の夜間に、親ガメの上陸や子ガメの孵化への影響を減らす取り組みが行われています。

ただし、

「この時期に行けば必ず見られる」

というものではありません。

そもそもウミガメは野生動物です。

そして産卵は、観光イベントではありません。

ウミガメにとっては、次の世代を残すための、とても繊細な時間です。

だからblissでは、

「産卵シーズンだから夜の砂浜へ探しに行こう」

とは案内しません。

むしろ、

産卵する可能性がある季節だからこそ、夜の砂浜では配慮する。

その考え方を伝えたいと思います。


夜の砂浜で、一番気をつけたいもの。

それが、

光です。

ウミガメは光の影響を強く受けます。

環境省によると、産卵のために上陸したメスは人工光や人の気配によって上陸をやめたり、産卵せず海へ戻ったりすることがあります。

そして孵化した子ガメも、光に影響されます。

本来は暗い砂浜から海の方向を判断して進みますが、人工的な光があると方向を見失い、砂浜を迷走してしまうことがあります。

懐中電灯。

スマートフォンの画面。

カメラのフラッシュ。

車のヘッドライト。

人間にとっては小さな光でも、

ウミガメにとっては大きな影響になる可能性があります。


もし、産卵中のウミガメを見つけたら?

まず、

近づかない。

そして、

照らさない。

騒がない。

これが基本です。

環境省のウミガメ観察ルールでも、産卵期の親ガメは非常に神経質で、人の気配や光によって産卵をやめてしまう可能性があるとされています。

「珍しいから写真を撮りたい。」

そう思う気持ちは自然です。

でも、

フラッシュを焚く。

ライトを向ける。

スマートフォンで囲む。

進行方向へ回り込む。

そうした行動は避けるべきです。

見つけたからこそ、

何もしない。

静かに距離を取る。

それも自然を楽しむ一つの方法です。


卵や子ガメを見つけても、触らない

産卵跡。

卵。

孵化したばかりの子ガメ。

もし偶然見つけても、

触らないこと。

「海まで連れていってあげよう。」

と思うかもしれません。

でも、野生生物に対して人間が善意で手を加えることが、必ずしもその生き物にとって良いとは限りません。

各地のウミガメ保全でも、親ガメや子ガメに近づかないこと、触らないことが基本ルールとされています。

必要がある場合は、地域の管理者や専門機関による対応が優先されます。


子ガメは、どうやって海へ向かう?

砂の中で孵化した子ガメは、

自分の力で地表へ出てきます。

そして、

海へ向かいます。

ここでも大切なのが、

暗い砂浜。

夜の自然な明るさの中で、子ガメは海の方向を判断します。

ところが砂浜の背後に強い人工光があると、

その方向へ進んでしまうことがあります。

海へたどり着けず、

体力を消耗する。

夜が明ければ、外敵に襲われる可能性も高まります。

環境省でも、人工照明によるこうした光害を、ウミガメの産卵地における重要な問題の一つとして挙げています。

つまり、

暗い海岸を残すことそのものが、保全になる。

私たちが何か特別なことをしなくても、

光を向けない。

騒がない。

ゴミを残さない。

それだけで守れるものがあります。


足元にも、気をつけたい

子ガメが孵化する時期になると、

砂浜の上には小さな命がいる可能性があります。

環境省も、暗い時間帯の砂浜では子ガメを踏んでしまう危険があるとして注意を呼びかけています。

これは、

「夜だからロマンチックな砂浜を歩こう」

という人間側の楽しみと、

ウミガメの時間が重なる瞬間です。

だからこそ、

昼間と夜では、同じ砂浜でも使い方を変える。

その意識が大切です。


ゴミも、ウミガメには障害になる

ウミガメの話というと、

光や海洋プラスチックの話を想像する人が多いかもしれません。

でも、砂浜にある普通のゴミも、

親ガメが上陸するとき。

子ガメが海へ向かうとき。

障害になる可能性があります。

環境省の観察ルールでも、砂浜のゴミが上陸や帰海の妨げになるとして、ゴミを残さないことが呼びかけられています。

伊豆大島の海岸を楽しんだら、

持ってきたものは、持って帰る。

当たり前のことですが、

それも海岸を守る行動の一つです。


「ウミガメを見に行く場所」にはしたくない。

この記事を読んで、

「じゃあ、夜に砂の浜へ行けばウミガメが見られるんだ。」

と思ってほしいわけではありません。

むしろ反対です。

砂の浜は、

ウミガメを探しに行く観光施設ではありません。

ウミガメが自然の中で産卵に利用している海岸です。

見られる保証はありません。

見られなくて当然です。

そして、

見られない状態の方が、ウミガメにとっては静かな夜なのかもしれません。

旅先では、

「せっかく来たから見たい。」

という気持ちが生まれます。

でも自然相手では、

見られないことも含めて、その場所を受け入れる。

そんな旅の仕方があってもいいと思います。


ウミガメが教えてくれる、伊豆大島のもう一つの姿

伊豆大島というと、

三原山。

裏砂漠。

黒い海岸。

椿。

そんな景色が思い浮かびます。

でも、この記事で見てきたように、

火山がつくった黒い砂浜は、

ただの地質景観ではありません。

そこに卵を産む生き物がいる。

海の中にはウミガメが泳いでいる。

砂の温度。

夜の暗さ。

人の光。

ゴミ。

どれも、

同じ海岸の中でつながっています。


【既存記事「なぜ伊豆大島の海岸は黒い?」/なぜ伊豆大島の海岸は黒い?黒い砂浜が生まれる理由を火山から深掘り|bliss

伊豆大島の黒砂がどう生まれたのかを知ると、このウミガメの話もさらに違って見えてきます。


昼間、僕たちが歩く砂浜。夜には、別の命が使っている。

これが、今回の記事で一番伝えたいことです。

昼間。

僕たちは景色を見ます。

写真を撮ります。

砂浜を歩きます。

でも夜になると、

同じ場所を、

別の生き物が使っているかもしれない。

人間だけのためにある海岸ではありません。

だから、

「自然を見に行く」

から、もう一歩。

「自然の中へ入らせてもらう」

くらいの感覚で歩くと、

島の景色は少し違って見えると思います。


まとめ|この海岸は、僕たちだけのものじゃない。

砂の浜では、

アカウミガメとアオウミガメの産卵が確認されています。

野田浜では、

海中を泳ぐウミガメとの遭遇例があります。

黒い砂は熱を持ち、

その温度は卵の発生にも関係します。

夜の光は、

親ガメの産卵や、

子ガメが海へ向かう行動へ影響する可能性があります。

私たちにできることは、

難しいことではありません。

近づかない。

照らさない。

触らない。

ゴミを残さない。

そして、

見られなくても追いかけない。

それだけでも、

同じ砂浜を使う別の命への配慮になります。


知ってから歩くと、いつもの海岸が少し違って見える。

伊豆大島には、

景色だけでは分からない物語がたくさんあります。

黒い砂浜がなぜ黒いのか。

その砂浜をどんな生き物が使っているのか。

海の中には何がいるのか。

一つ知ると、

その次の「なぜ?」が生まれる。

blissでは、そんな伊豆大島をこれからも紹介していきます。

そして実際に島を巡るときには、

ただ有名な観光地を回るだけではなく、

少し寄り道して、

その場所の背景まで感じてみてください。

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