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伊豆大島の地層大切断面はなぜバームクーヘンみたい?約1万8000年の噴火の記録

伊豆大島の地層大切断面はなぜバームクーヘンみたい?約1万8000年の噴火の記録

2026.10.03伊豆大島深掘り伊豆大島地層大切断面火山三原山伊豆大島ジオパークスコリア執筆:株式会社bliss(レンタカー事業)

はじめに|道路の横に、1万8000年

伊豆大島を島一周道路で走っていると、

道の横に突然、

巨大な縞模様が現れます。

高さは約30m。

長さは約600m。

何層にも重なった地面が、

大きく波打ちながら続いている。

その見た目から、

地元では、

「バームクーヘン」

とも呼ばれている場所です。

正式な名前は、

地層大切断面。

大島町も、高さ約30m・長さ約600mに及ぶ地層として紹介しています。

大島町公式サイト

でも、

この縞模様。

ただ色の違う土が、

何層も重なっているわけではありません。

ここに残されているのは、

過去約1万8000年間の火山活動の記録。

伊豆大島ジオパークによると、

この地層には、

その間に繰り返された

100回を超える大規模噴火

の噴出物が記録されています。

伊豆大島ジオパーク

ただし、

ここで一つ、

最初に知っておきたいことがあります。

**縞一本=噴火一回、

ではありません。**

そして、

あの大きく波打った地層も、

後から地震などで、

ぐにゃぐにゃに曲げられたわけではありません。

では、

あの縞模様は、

どうやってできたのでしょう。

今回は、

「巨大なバームクーヘン」

で終わらせず、

地層の中に残っている“時間”

を読んでいきます。


1|道路の横にある「巨大バームクーヘン」

地層大切断面は、

もともと、

あの巨大な壁のような姿で、

外から見えていたわけではありません。

現在の断面が現れたきっかけは、

1953年。

島一周道路の建設工事です。

道路を通すために、

山を削った。

すると、

その山の内部から、

巨大な縞模様の地層が姿を現しました。

つまり、

地層を作ったのは火山。

その断面を見えるようにしたのは、道路工事。

ということです。

伊豆大島ジオパークも、1953年の道路建設時に山を削ったことで、この巨大な縞模様が現れたと説明しています。

伊豆大島ジオパーク

現在では、

島一周道路を走っていれば、

車窓からでも分かるほど大きな景色です。

でも、

考えてみると不思議です。

もし、

あの道路が作られていなかったら。

今見えている、

約1万8000年分の地層の一部は、

そのまま山の中に隠れていたことになります。

**人が山を切ったことで、

火山の時間が見えるようになった。**

これが、

地層大切断面という場所です。



2|縞一本が、「一回の噴火」ではない

地層大切断面を遠くから見ると、

黒。

茶色。

黄土色。

色の違う線が、

何本も重なって見えます。

すると、

つい、

「この線一本が、一回の噴火なのかな?」

と思いたくなります。

でも、

実際はもう少し複雑です。

伊豆大島ジオパークでは、

地層の基本的な一つの単位を、

大きく3つに分けて説明しています。

まず、

噴火が起きる。

すると、

スコリア

が降り積もる。

スコリアとは、

マグマが噴火によって吹き飛ばされ、

空中で冷えてできた、

穴の多い火山噴出物です。

その後、

火山灰

も積もる。

そして、

噴火活動が終わる。

次の大きな噴火まで、

静かな時間が続きます。

その間、

地表の火山灰が風化したり、

土ぼこりなどが積もったりして、

土壌・風化火山灰の層

が作られます。

そして、

また次の噴火が起こる。

公式解説では、

この、

スコリア

+

火山灰

+

風化火山灰・土壌

という組み合わせを、

一回の活動期の基本的な単位

として考えています。

伊豆大島ジオパーク

つまり、

黒い線だけを数えて、

「噴火は○回」

と考えるわけではありません。

**線を数えるのではなく、

“セット”を見る。**

ここが、

地層大切断面を見るときに、

最初に知っておきたいポイントです。



噴火していない時間も、地層に残っている

さらに面白いのは、

地層が記録しているのが、

噴火した瞬間だけではない

ことです。

火山が噴火して、

スコリアや火山灰が積もる。

そこまでは、

「火山の記録」

として分かりやすい。

でも、

その上にできる土の層は、

むしろ、

噴火していなかった時間

の記録です。

次の噴火が来るまで、

雨が降る。

風が吹く。

植物が育つ。

地表が少しずつ変化していく。

そうした時間も、

地面の中へ残されていきます。

だから、

地層大切断面を、

単なる

「昔の噴火の跡」

とだけ考えると、

少し足りません。

そこに積もっているのは、

**噴火。

そして、静かな時間。**

その繰り返しです。


3|地層は、なぜこんなに波打っている?

地層大切断面には、

もう一つ、

見た瞬間に気になる特徴があります。

地層が大きく波打っていること。

まっすぐ水平に積もるのではなく、

上がったり、

下がったり。

大きな曲線を描きながら、

縞模様が続いています。

初めて見ると、

地震などで地面が押され、

後から地層が曲がったようにも見えます。

地質学では、

地層が圧力などで曲げられることを、

褶曲

と呼びます。

でも、

地層大切断面の大きな波形は、

褶曲ではありません。

伊豆大島ジオパークによると、

この波打ちは、

もともとあった地形の起伏によるものです。

伊豆大島ジオパーク

昔の地面にも、

尾根がある。

谷がある。

斜面がある。

当然、

平らではありません。

そこへ噴火が起こり、

スコリアや火山灰が、

その地形の表面を覆うように積もる。

また時間が経つ。

そして、

次の噴火で、

さらにその上を覆う。

それを何度も繰り返す。

後から道路工事で、

その地面を横向きに切る。

すると、

昔の尾根や谷をなぞるように積もった地層が、

今のような、

大きく波打った模様として現れます。

つまり、

地層が、後から曲がったのではない。

**昔の地形をなぞるように、

上から積もっていった。**

これが、

地層大切断面が、

巨大なバームクーヘンのように見える、

大きな理由の一つです。


「波」を見ると、昔の地面が見えてくる

このことを知ると、

縞模様の見え方が変わります。

今までは、

ただ、

「ぐにゃぐにゃしている」

ように見えたものが、

昔の地面の形

に見えてくる。

高く盛り上がっているところには、

もともとの地形にも、

起伏があった。

低く沈み込んでいるところにも、

昔の谷や斜面があった。

もちろん、

現在の写真だけを見て、

一つ一つの具体的な地形を、

旅行者が断定することはできません。

でも、

「この縞の形にも理由がある」

と知るだけで、

景色はかなり変わります。


4|道路の横に、約1万8000年が見えている

地層大切断面に残されている時間は、

数百年ではありません。

数千年でもありません。

伊豆大島ジオパークによると、

現在見ることができる地層には、

過去約1万8000年間

に起きた、

100回を超える大規模噴火

の噴出物が記録されています。

伊豆大島ジオパーク

1万8000年。

数字だけ聞いても、

正直、

すぐには想像しにくい時間です。

今から1万8000年前といえば、

現在の道路も、

港も、

町並みもない。

もちろん、

今の「伊豆大島」という暮らしの形もありません。

それでも、

火山は噴火する。

スコリアが降る。

火山灰が積もる。

噴火が終わる。

地表が風化し、

土ができる。

そして、

また次の噴火が来る。

その繰り返しが、

地面の中へ、

少しずつ残されていきました。

伊豆大島では、

この時期以降、

おおむね

100〜200年間隔で大規模噴火を繰り返してきた

ことが地層から読み取られています。

伊豆大島ジオパーク

ただし、

これは、

「100〜200年ごとに必ず次の噴火が起きる」

という意味ではありません。

あくまで、

過去の地層から読み取られた、

大規模噴火の繰り返しの傾向です。

今回の記事では、

未来の噴火時期を予測するものではありません。

それよりも、

見てほしいのは、

時間の長さです。

道路脇に見えている、

高さ約30m、

長さ約600mの縞模様。

そこには、

人の一生では到底測れないほどの時間が、

積み重なっています。

大島町公式サイト

**600mの道路脇に、

人の一生では測れない時間が並んでいる。**


火山から出たものは、「地層」にも「砂」にもなる

前回紹介した、

砂の浜。

そこにある黒い砂も、

もとは、

火山島から生まれたものです。

火山灰。

火山砂。

細かく砕けた溶岩。

それらが、

雨や沢によって海まで運ばれ、

波や風に動かされる。

そして、

黒い砂浜になる。

一方、

地層大切断面では、

火山から出た物質が、

その場に積み重なり、

「地層」

として残っています。

つまり、

同じ火山島でも、

火山から出たものの行き先によって、

見える景色が変わる。

海へ運ばれれば、砂になる。

陸に積もれば、地層になる。

こうして見ると、

砂の浜と、

地層大切断面は、

まったく別の観光地ではありません。

どちらも、

伊豆大島という火山が作った景色の続き。

です。


火山から出たものが、雨や沢を通って海へ運ばれ、黒い砂浜になるまでについては、前の記事で詳しく紹介しています。

「火山のかけらが黒い砂浜になるまでを見る」


5|地層の途中には、「島の形が変わった噴火」も残っている

地層大切断面を見ると、

同じような縞模様が、

延々と続いているように見えます。

でも、

伊豆大島の火山活動が、

ずっと同じだったわけではありません。

地層大切断面の西端上部には、

普通の縞模様とは少し違う層があります。

大きな岩塊。

大小さまざまな、

角張った岩片。

そこへ、

土砂が混ざった堆積物。

これは、

約1700年前

に起きた大規模な火山活動の痕跡です。

伊豆大島ジオパーク

この時期、

伊豆大島の山頂部では、

大規模な水蒸気噴火を伴う活動が起こり、

現在の山頂カルデラにつながる大きな地形変化が起きたと考えられています。

伊豆大島ジオパーク

その時に飛ばされた岩塊や、

流れてきた火砕流の堆積物が、

地層大切断面にも残っています。

伊豆大島ジオパーク

つまり、

地層をよく見ると、

ただ、

同じ噴火が100回以上繰り返された

という話ではありません。

長い時間の中には、

島の形そのものに、

大きな変化を与えた火山活動もあった。

そして、

その出来事も、

地面の中に記録されています。

**同じ縞模様が、

ただ繰り返されているわけではない。**

地層は、

回数だけではなく、

火山活動の“変化”

まで残しています。


火山活動が島の形を変えた痕跡は、地層だけではありません。島の南部には、火山活動で生まれた地形が、その後、人の暮らす港町へ変わった場所もあります。

「火口から港町へ変わった、波浮港の歴史を読む」



6|次に見たら、「模様」ではなく時間を見る

地層大切断面を、

何も知らずに初めて見たら、

「バームクーヘンみたい。」

それで十分です。

実際、

地元でもそう呼ばれてきました。

大島町公式サイト

写真を撮る。

大きさに驚く。

島一周ドライブの途中で、

立ち止まって見る。

それも、

この場所の楽しみ方です。

でも、

今回の記事を読んだあとに、

もう一度見る機会があったら、

少しだけ、

違うところを見てみてください。

まず、

一本の線だけを見ない。

黒っぽい層。

その上の火山灰。

さらに、

その上の土の層。

**スコリア。

火山灰。
土壌。**

その“セット”を見る。

すると、

一つの層の中に、

噴火した時間だけではなく、

噴火が終わったあとの時間

まで入っていることが見えてきます。

次に、

縞模様の形を見る。

上がる。

下がる。

また上がる。

その波を見たら、

「地層が曲がった」

ではなく、

「昔の地面は、どんな形だったんだろう?」

と考えてみる。

答えを、

その場ですべて理解する必要はありません。

地質学の知識がなくてもいい。

一つだけ、

「この形には理由がある。」

と思えれば、

十分です。

そして、

最後に、

少し遠くから、

地層全体を見てみてください。

目の前にあるのは、

ただの崖ではありません。

ただの縞模様でもありません。

噴火する。

静かになる。

土ができる。

また噴火する。

それを、

何度も、

何度も繰り返した。

約1万8000年間の積み重なり。

だから、

地層大切断面で、

最後に覚えて帰ってほしいのは、

数字そのものではありません。

**見えているのは、

岩ではなく時間。**

その感覚です。


地層大切断面を見るときの注意

地層大切断面は、

道路沿いにある場所です。

そして、

大島町は、

ガードレールや柵の内側について、

見学スペースではない

と明記しています。

その空間は、

崩落が起きたときに、

車道への被害を減らすために設けられたもので、

原則立入禁止です。

大島町公式サイト

したがって、

地層へ近づいて、

直接触る。

ガードレールの内側へ入る。

崖の下から写真を撮る。

といった見方はしません。

また、

島一周道路沿いなので、

車道へ出て撮影したり、

交通の妨げになる場所で立ち止まったりしないことも大切です。

地層は、近づかなくても見れます。

安全な位置から、

全体の縞模様を見る。

それで十分です。


伊豆大島には、

火山があります。

でも、

火山を見る場所は、

三原山だけではありません。

記事49では、

海岸の黒い砂から、

火山を見ました。

今回は、

道路の横にある地層から、

火山を見ています。

一方は、

移動した火山のかけら。

もう一方は、

積み重なった火山の時間。

同じ島でも、

見る場所を少し変えるだけで、

火山の姿は、

まったく違って見えます。

地層大切断面も、

最初は、

ただの

巨大なバームクーヘン

でいい。

でも、

一度、

その意味を知ったあとなら、

もう、

同じ景色には見えません。

黒い線を見る。

その上を見る。

土を見る。

波打つ形を見る。

そして、

その奥にある時間を想像する。

**景色は、

知ったあとにもう一度面白くなる。**

地層大切断面は、

そのことが、

とても分かりやすい場所です。


知ってから通ると、600mの景色が変わる。

地層大切断面は、
伊豆大島を一周している途中に、
突然現れます。

何も知らなくても、
巨大な縞模様は十分に印象的です。

でも、
その中に約1万8000年の時間が積み重なっていると知ると、
同じ道路が少し違って見えてきます。

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参考資料

伊豆大島ジオパーク|地層大切断面
→ 1953年の道路工事、約1万8000年間、100回超の大規模噴火、スコリア・火山灰・土壌、褶曲ではないこと、約1700年前の堆積物。 伊豆大島ジオパーク

伊豆大島ジオパーク|伊豆大島火山に関する情報
→ スコリア・火山灰・土壌による活動期の読み方、古期/新期大島層群、約1700年前のカルデラ形成。 伊豆大島ジオパーク

伊豆大島ジオパーク|山頂カルデラ
→ 約1700年前のカルデラ形成と大規模な水蒸気噴火。 伊豆大島ジオパーク

大島町|地層大切断面
→ 高さ約30m・長さ約600m、バームクーヘンという呼称、波形の成り立ち、立入禁止。大島町公式サイト

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