はじめに|黒いのは、火山島だから。でも、それだけじゃない。
伊豆大島の南西側に、
約1kmにわたって続く、
黒い砂浜があります。
名前は、
砂の浜(さのはま)。
「すなのはま」
ではなく、
さのはま
と読みます。
伊豆大島には、
溶岩でできた岩場や、
海に削られた崖が多くあります。
その中で、
これだけ長く黒い砂が続く砂の浜は、
かなり印象的な景色です。伊豆大島ジオパークでは、砂の浜を島内で最も長い砂浜として紹介しています。
伊豆大島ジオパーク
初めてここへ来たら、
海より先に、
足元が気になる人もいるかもしれません。
「なんで、こんなに黒い?」
答えだけ言えば、
伊豆大島が、
玄武岩を主体とする火山島だから。
でも、
それだけではありません。
火山灰。
火山砂。
細かく砕けた溶岩。
山にあった火山由来の物質が、
雨によって動き、
沢を下り、
海岸へ届く。
そこからさらに、
波に動かされる。
風にも動かされる。
そうして、
今の砂の浜があります。 伊豆大島ジオパーク
**砂の浜は、
火山のかけらが海まで旅をした場所。**
今回は、
黒い砂の正体から、
その砂がどうやって海岸まで来たのか。
そして、
なぜ今も砂浜そのものが動き続けているのかまで、
足元から大島を見ていきます。
1|「砂の浜」は、本当に真っ黒な砂浜
砂の浜へ降りると、
まず目に入るのは、
海の青より、
その手前に広がる
黒。
黒い砂が、
海岸に沿って長く続いています。
砂の浜は、
伊豆大島ジオパークで、
島内最長の砂浜
として紹介されている場所です。
長さは、
およそ1km。
伊豆大島の海岸は、
どこへ行っても砂浜が続く島ではありません。
むしろ、
溶岩由来の岩場や、
波に削られた海食崖が目立つ島です。 伊豆大島ジオパーク
だからこそ、
長く続く黒い砂浜は、
大島の中でも少し違った景色に見えます。
でも、
この黒さは、
写真を印象的にするためにあるわけではありません。
砂そのものに、
黒く見える理由があります。
**海の青より先に、
足元の黒が気になる。**
では、
その黒い砂は、
何からできているのでしょう。
2|黒い砂の正体は何?
伊豆大島は、
島そのものが一つの活火山です。
気象庁は、
伊豆大島を
主に玄武岩からなる火山島
と説明しています。 気象庁データ
玄武岩は、
一般的に黒〜暗い色をした火山岩です。
そして、
砂の浜に集まっているものも、
一種類ではありません。
伊豆大島ジオパークでは、
砂の浜の黒砂について、
火山灰
火山砂
砕けて細かくなった溶岩
などが、
沢を通って海岸へ運ばれ、
堆積したものだと説明しています。
それらは、
伊豆大島をつくる
玄武岩質の火山噴出物
を主体としている。
だから、
浜全体が、
あれほど黒く見えるのです。
つまり、
黒い砂=一種類の黒い石
というわけではありません。
火山から出たもの。
噴火で積もったもの。
岩が細かくなったもの。
それらが、
長い時間の中で移動し、
海岸に集まっています。
**砂にも、
火山島の出身地がある。**

三原山や溶岩を見ると、
「火山島に来た」
と感じやすいと思います。
でも、
火山の痕跡は、
山の上だけにあるわけではありません。
**足元の砂まで、
火山の物語の続きです。**
3|山にあった火山のかけらは、どうやって海まで来る?
ここで、
一つ疑問が出てきます。
火山灰や、
砕けた溶岩が、
もともと山側にあるのなら、
どうやって海岸まで来たのでしょう。
答えの一つが、
雨です。
雨が降る。
地表に積もっている、
火山灰や火山砂。
細かくなった岩石が、
水によって動き始める。
それが、
低い場所へ集まり、
沢を下っていく。
そして、
海岸まで運ばれる。
伊豆大島ジオパークでも、
砂の浜は、
火山灰・火山砂・砕けて細かくなった溶岩が、
沢を下って海岸へ運ばれ、堆積した砂浜
と説明されています。 伊豆大島ジオパーク
ここで、
これまでの記事を読んでくれた方なら、
少し不思議に思うかもしれません。
「大島って、川がないんじゃなかった?」
その通りです。
正確には、
伊豆大島には、
常時水をたたえる川や湖がありません。
「では、なぜ伊豆大島には常時水が流れる川がないの?」というところから知りたい方は、火山島の地面と地下水について前の記事で詳しく紹介しています。
火山性の地面は水を通しやすく、
降った雨の多くが、
地面へ染み込んでいくからです。
でも、
川がない=雨水が地表をまったく流れない
という意味ではありません。
強い雨などで、
地表を流れる水が生まれれば、
その水が、
細かな火山由来の物質を運ぶことがあります。
そして、
沢を通って、
海まで届く。
同じ雨でも、
地下へ入れば、
地下水になる。
地表を流れれば、
火山のかけらを海へ運ぶこともある。
**記事44では、
雨が地面の下へ入る話。**
**今回は、
雨が火山のかけらを海まで運ぶ話。**
同じ島。
同じ雨。
でも、
そこからできる景色は、
一つではありません。

4|砂の浜は、「できたまま」の景色ではない
山から運ばれて、
海岸へたどり着いた黒い砂。
でも、
そこで砂の移動が終わるわけではありません。
次に砂を動かすのが、
波です。
砂の浜では、
季節によって、
海岸へ押し寄せる波の方向が変わります。
そして、
その波によって、
砂は浜の中を移動します。
伊豆大島ジオパークでは、
砂の移動が非常に活発で、
**冬は南東側の浜が広がり、
夏は北西側の浜が広くなる傾向**
があると紹介されています。 伊豆大島ジオパーク
つまり、
旅行者が今日見ている砂浜と、
別の季節に見る砂浜では、
砂の広がり方そのものが、
少し違うことがあります。
**砂浜は、
今も動いている。**
「砂の浜」という一つの観光スポットが、
ずっと同じ形でそこに置かれているわけではありません。
波が来る。
砂を運ぶ。
また別の波が来る。
そして、
季節が変わる。
その繰り返しの中で、
砂浜の形も変化し続けています。
風も、砂を動かしている
砂を動かすのは、
波だけではありません。
風。
海から吹き上げる風によって、
砂の浜の上部では、
砂が陸側へ運ばれます。
伊豆大島ナビでは、
その風によって、
浜の上部に
小規模な砂丘
が形成されていることも紹介されています。 伊豆大島ナビ
砂を動かしている大島の風そのものについては、冬の強い西寄りの風「ニシ」がどこから来るのか、本州の山を回り込む仕組みまで別の記事で紹介しています。
ここまで来ると、
砂の浜ができる流れは、
かなり面白くなります。
山では、
火山が材料をつくる。
雨が、
その火山のかけらを沢へ運ぶ。
沢を下って、
海岸へ届く。
海では、
波が砂を動かす。
そして、
風も砂を動かす。
**火山。
雨。
沢。
波。
風。**
別々に見える自然現象が、
一つの黒い砂浜の中で、
全部つながっています。

5|黒い砂は、景色だけを変えているわけではない
砂の浜の特徴は、
見た目が黒いことだけではありません。
黒は、熱を吸収しやすい。
そのため、
日差しの強い夏には、
砂そのものが、
かなり高温になることがあります。
伊豆大島ジオパークでも、
夏の黒砂について、
裸足では火傷しそうなほど熱くなることがあると案内しています。 伊豆大島ジオパーク
つまり、
**「黒い」は、
見た目だけの特徴ではない。**
砂の色は、
その場所の温度にも関係しています。
夏に砂の浜を訪れるなら、
「砂浜だから裸足で歩こう」
とは考えず、
足元にも注意が必要です。
黒い砂浜は、生き物の場所でもある
そして、
この黒い砂浜には、
もう一つの顔があります。
ウミガメの産卵地。
環境省のモニタリングでは、
砂の浜を含む間伏海岸で、
アカウミガメ
と
アオウミガメ
の産卵が確認されています。 バイオディック
同資料では、
伊豆大島の黒砂は、
太陽光の影響を受けやすく、
砂中温度も比較的高くなることが報告されています。 バイオディック
ただし、
ここで、
「黒い砂だからウミガメが来る」
と単純には説明しません。
ウミガメが産卵場所を選ぶ理由には、
さまざまな環境条件があります。
今回伝えたいのは、
黒い砂の性質が、
見た目だけでなく、
砂浜の温度や、そこで暮らす生き物の環境にも関係している
ということです。
砂の浜は、
観光客が見る景色であると同時に、
生き物が利用する場所でもあります。
6|砂の浜へ行ったら、海だけでなく足元を見る
砂の浜へ行くと、
最初に目が向くのは、
やっぱり海だと思います。
水平線。
伊豆諸島の島影。
夕方なら、
西の空。
それも、
砂の浜の大きな魅力です。
でも、
今回の記事を読んだあとには、
もう一つだけ見てほしいものがあります。
足元です。
そこにある黒い砂は、
ただ、
海岸にもともと置かれていたものではありません。
火山が、
材料をつくる。
火山灰や火山砂、
岩石のかけらが生まれる。
雨が、
それを動かす。
沢を下る。
海まで来る。
波が動かす。
風も動かす。
そうして、
今、
あなたの足元にある。
**砂の浜は、
火山のかけらが海まで旅をした場所。**
そして、
その旅は、
海へ着いたところで、
終わっていません。
波によって、
季節ごとに動く。
風によって、
陸側へ運ばれる。
砂浜そのものが、
今も変わり続けています。
**砂の浜は、
完成した景色ではない。**
今も作られ続けている景色です。
砂の浜を訪れるときの注意
砂の浜は、
伊豆大島ナビでも、
一年を通して風や波が強く、遊泳スポットではない
と案内されています。 伊豆大島ナビ
そのため、
波が高い日や、
風が強い日は、
海際へ無理に近づかない。
その日の気象や海況を優先してください。
また、
夏は、
黒い砂が非常に熱くなる場合があります。
裸足で歩くことも勧めません。
安全に景色を楽しみながら、
黒い砂を、
少しだけ足元から眺める。
それで十分です。
火山から出たものは、海岸では「砂」として残り、島の道路沿いでは、長い時間を重ねた「地層」として見える場所もあります。
足元まで見ると、大島はもっと面白い。
伊豆大島には、
名前の付いた観光地だけでなく、
その途中や足元にも火山島の物語があります。砂の浜へ行ったら、
海だけではなく、
黒い砂にも少し目を向けてみてください。島での移動や過ごし方について迷ったときは、
blissのLINEからお気軽にご相談ください。知ってから見ると、何気ない景色にも理由が見えてくる。
参考資料
伊豆大島ジオパーク|砂の浜(さのはま)
→ 黒砂の材料、沢による運搬、約1km、季節による砂移動、黒砂の高温、ウミガメ。
伊豆大島ナビ|砂の浜
→ 沢からの砂供給、波と風による砂移動、小規模な砂丘、遊泳非推奨。
環境省|モニタリングサイト1000 ウミガメ類調査
→ 砂の浜を含む間伏海岸の黒砂、砂中温度、アカウミガメ・アオウミガメの産卵。
