はじめに|今では特産品。でも、昔はもっと身近だった。
伊豆大島の食べものを調べると、よく名前が出てくる明日葉。
今では、大島を代表する特産品の一つとして知られています。
でも島では、もっと昔から暮らしの近くにあった食材でした。
家のまわりや道端にも生え、普段の食卓に使われる。
そして昔は、
「あしたぼ」
と呼ばれていた。
今回は、観光名物になる前から島の日常にあった明日葉を、少しだけ深く見てみます。
1|明日葉は、大島では特別な野菜ではなかった
今では「伊豆大島の名物」として紹介されることの多い明日葉。
でも、もともとの島での姿はもう少し日常的でした。
伊豆大島ジオパークの資料でも、明日葉は家のまわりや道端などに自然と生え、昔は食べたいときに必要な分を採って食べるほど身近な存在だったと紹介されています。
私自身、伊豆大島で育ちましたが、子どもの頃から明日葉は普通に食卓に出てくる食材でした。
当時は、
「大島の特産品を食べている」
という感覚はほとんどありませんでした。
島にあるものを、普通に食べる。
明日葉は、それくらい暮らしの近くにあったものです。

今では商品として並び、お土産にもなっている明日葉。
でも、その前には、
島のいつもの食卓にあった明日葉
があります。
2|「あしたば」じゃなくて、「あしたぼ」?
そして、明日葉についてもう一つ面白いのが、
名前です。
今では当然のように、
「あしたば」
と呼ばれています。
ところが伊豆大島では、かつて、
「あしたぼ」
と呼ばれていました。
伊豆大島ジオパークの公式資料にもこの呼び名が残っており、現在の「あしたば」という名称が一般的になったのは、昭和の終わり頃に健康食として広く知られるようになってからとされています。
この「あしたぼ」という呼び方には、私自身にも記憶があります。
子どもの頃、祖母世代が明日葉のことを、
「あしたぼ」
と呼んでいるのを実際に聞いていました。

当時は、それが特別な呼び方だとは思っていませんでした。
今振り返ると、
全国的に「あしたば」として知られる前から、島の暮らしの中には**「あしたぼ」と呼ばれていた時間**があったということです。
名前を一つ知るだけでも、
今の「特産品」とは少し違う明日葉の姿が見えてきます。
3|なぜ大島では、明日葉が身近に育った?
では、
なぜ明日葉は伊豆大島でこれほど身近な植物だったのでしょうか。
理由は、
単純に、
「火山島だから」
だけではありません。
伊豆大島は比較的雨が多く、火山灰やスコリアなどを含む地面は水はけが良い。
さらに、木々や防風林の周辺には、強い日差しが一日中当たり続けるのではない半日陰の環境もあります。
こうした複数の条件が重なり、明日葉が育ちやすい場所が島の暮らしのすぐ近くにもありました。
だから、
畑へ行かなければ出会えない特別な植物ではなく、
家の近く。
道のそば。
いつもの風景の中にある。
そんな存在になっていったのでしょう。
大島を歩いたり、車で走ったりしていて明日葉らしい植物を見かけたら、
「昔はこういう身近な場所から、食卓につながっていたんだ」
と少し思い出してみてください。
ただの緑だったものが、
少し違って見えてくるかもしれません。
※私有地や道路脇、自然公園内などの植物をむやみに採取せず、見るだけで楽しんでください。
4|島の人は、明日葉をどう食べてきた?
身近に生えていた明日葉は、
島の食卓でも、特別な日の料理というより普段の食事の中で使われてきました。
天ぷらにする。
茹でて、おひたしや和え物にする。
炒め物にする。
汁物に入れる。
食べ方は一つではありません。
「伊豆大島の明日葉料理」と聞くと、何か一つの決まった郷土料理があるように感じるかもしれません。
でも実際には、
普段作っている料理の中に、明日葉が入っていた。
という方が、昔の島での距離感には近いのだと思います。
これは、
明日葉が珍しい食材ではなく、
暮らしの近くにあった食材だったからこその食べ方でもあります。
今、大島の飲食店で明日葉の天ぷらなどを食べると、
「大島名物を食べている」
と感じるかもしれません。
でも、その一皿の向こうには、
家庭ごとに違う食べ方があり、
日々の食卓に明日葉が並んでいた時間があります。
明日葉だけでなく、伊豆大島には島の魚介や郷土料理など、暮らしや自然とつながった食がほかにもあります。大島へ行ったら何を食べようか考えている方は、伊豆大島で食べたいものを探してみてください。

5|昔の日常食が、今では美容・健康でも注目される
島では昔から身近だった明日葉ですが、
今では栄養面からも知られるようになりました。
明日葉には、
βカロテン、ビタミンC・E、食物繊維など
が含まれています。
そのため現在では、
健康や美容を意識する人からも注目される食材の一つになっています。
少し面白いのは、
今「健康にいい野菜」として注目されているものを、島ではそれよりずっと前から普通に食べていたこと。
です。
ただ、
大島で明日葉を食べるときに、
栄養成分を全部覚えておく必要はありません。
「あしたぼ」と呼び、
身近な場所に生えていたものを、
普段の食卓で食べてきた。
その背景を一つ知っているだけで十分です。
6|大島で明日葉を食べるなら
伊豆大島へ来て、
飲食店のメニューに明日葉料理を見つけたら、
まずは一度食べてみてください。
天ぷらかもしれない。
和え物かもしれない。
自分が想像していなかった料理かもしれません。
そして、
もしお店の人と話せそうなら、
一つだけ聞いてみてほしいことがあります。
「島の人は、明日葉をどう食べるんですか?」
自分が今食べている料理とは、
また違う答えが返ってくるかもしれません。
「うちではこうする。」
「昔はこんなふうに食べた。」
そんな話が聞けたら、
明日葉はもう、
ただの「伊豆大島名物」ではなくなります。
明日葉と同じように、名前だけ知っているより背景を知ると少し面白くなる大島の食があります。伊豆大島名物の「べっこう」もその一つ。実は、「べっこう」という名前の魚がいるわけではありません。
「伊豆大島名物・べっこうは何の魚なのか、もう少し深く見てみる」
今では、
伊豆大島を代表する特産品の一つになった明日葉。
でも島では、
それよりずっと前から、
「あしたぼ」
と呼ばれ、
暮らしの近くで食べられてきました。
大島で明日葉を食べるとき、
そのことを少しだけ思い出してみてください。
同じ一皿でも、少し違って見えるはずです。
明日葉を食べるだけでなく、夕食や翌日の朝まで含めて島の食をゆっくり楽しみたい方は、旅行の日数から考えてみるのもおすすめです。日帰り・1泊2日・2泊3日で何が変わるのかを比較しています。
そして、
島を歩いたり車で走ったりしているとき、
明日葉らしい植物を見つけたら、
「あれが、昔は食卓のすぐ近くにあったものなんだ」
と思い出してもらえたらと思います。
※私有地や道路脇、自然公園内などの植物をむやみに採取せず、見るだけで楽しんでください。
「大島で明日葉を食べてみたい」。そんな小さな理由から旅を始めてもいいと思います。
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