伊豆大島の北東部、泉津(せんづ)地区には、少し不思議な景色があります。
二本の大きな木が立ち、その根に囲まれるように、細い階段が奥へと続いている場所。
「泉津の切り通し」と呼ばれるこの場所は、独特な景観で知られています。
けれど、この階段は、ただ不思議な景色として存在しているわけではありません。
かつて地域の人々が利用するために切り開いた道だった、という話が残っています。
写真では不思議な景色。でも、そこには人が通ってきた道の物語がある。
今回は、泉津の切り通しの特徴と、そこに伝わる由来、現地で注目したい景色の見方、訪れる際の注意点をご紹介します。
① 泉津の切り通しは、どんな場所?
泉津の切り通しは、伊豆大島の北東部、泉津地区にある小さな通り道です。
大島一周道路から一本奥へ入った場所にあり、二本の大きな木と、その間に続く階段が特徴的な景観をつくっています。
そもそも「切り通し」とは、丘や斜面などを切り開き、人が通れるようにした道のこと。
泉津の切り通しでは、階段の左右に土の斜面が立ち上がり、その上から大きな木の根が広がっています。
根は斜面をつかむように張り出し、周囲には苔や植物が育っています。
そして、木々の間には人が通るための階段が続いています。
ここで注目したいのは、木の根と階段が、一つの景色になっていること。
木だけを見ても、階段だけを見ても、この場所の特徴は十分に伝わりません。
大きな根が左右から広がり、その間を人の道が通っている。
その組み合わせが、泉津の切り通しならではの景観を生み出しています。

一見すると、自然の中に偶然できた通路のようにも見えるかもしれません。
しかし、ここには人が道を切り開いてきた歴史があります。
では、この階段は何のためにつくられたのでしょうか。
② この階段は、何のために作られた?
泉津の切り通しを初めて見ると、大きな木の根の間に階段が続く姿に、思わず目を奪われます。
まるで古い遺跡の入口のようにも見えますが、この場所には、もっと身近な暮らしと結びついた由来が伝えられています。
2023年、Jタウンネットが大島町観光課へ取材した記事では、かつてこの切り通しの先に「泉津保育園」があり、そこへ子どもたちを送り届けるため、地域住民が協力して道を切り開いたと伝えられていることが紹介されています。
つまり、今は独特な景観を見に観光客が訪れるこの階段も、もともとは地域の人々が日常の中で利用するための道だったという話があるのです。
ただし、いつ切り開かれたのか、誰が工事に携わったのかなど、詳しい記録は確認できていません。
そのため、現在の階段や木の根が、当時から同じ姿だったと考えることもできません。
わかっていることと、まだわかっていないことは分けて受け止めたいところです。
それでも、この由来を知ると、景色の印象は少し変わります。
写真では不思議な階段。
けれど、その背景には、子どもたちのために道をつくろうとした地域の人々の存在が伝えられています。
今は観光客が足を止める場所にも、かつては誰かの日常があったのかもしれません。
泉津の切り通しは、自然の姿だけでなく、島の暮らしにも目を向けたくなる場所です。
③ 現地では、何に目を向ける?
泉津の切り通しを訪れたら、階段の全景を眺めるだけでなく、少し視線を変えてみてください。
注目したいのは、木の根・階段・木々の間から差し込む光の3つです。
01|ROOTS — 木の根
最初に目を向けたいのは、階段の両側に広がる大きな木の根です。
土の斜面に沿って伸び、複雑に曲がりながら周囲へ広がっています。
普段、木の根は地面の下に隠れていますが、ここではその一部を間近に見ることができます。
ただし、現在の根がどのような過程でこの姿になったのか、詳しいことは確認されていません。
なぜこの形になったのかを想像する前に、まずは目の前の根の広がりを観察してみましょう。
02|STEPS — 人が通るための階段
次に注目したいのが、巨木の間を通る階段です。
大きな根に目を奪われがちですが、この階段があることで、初めて一つの通り道になっています。
かつて保育園への通園路だったと伝えられる背景を思い出しながら見ると、人が利用するためにつくられた道としての姿が見えてきます。
03|LIGHT — 木々の間から差す光
もう一つは、木々の間から差し込む光です。
上を見上げると枝葉が広がり、天候や時間によって階段の明るさが変わります。
光が差し込む場所と、木の陰になる場所。
その違いによって、根や階段の輪郭も違って見えることがあります。
特別な時間帯を狙う必要はありません。
その日に見える景色を、無理のない場所から静かに眺めてみてください。

泉津の切り通しでは、何か特別なものを探す必要はありません。
木の根があり、その間に人が通る道がある。
その景色を少し丁寧に見てみるだけでも、写真で見たときとは違った発見があるはずです。
④ 泉津の切り通しへは、どう行く?
泉津の切り通しは、伊豆大島の北東部、泉津地区にあります。
大島一周道路から脇道へ入ったところにあり、大きな観光施設のように入口が目立つ場所ではありません。
初めて訪れる場合は、事前に位置を確認しておくと安心です。
バスで訪れる場合
レンタカーを利用しない場合は、大島バスの「大島公園ライン」を利用できます。
最寄りの停留所は**「椿トンネル」**です。
大島バスの公式観光案内では、切り通しを含む椿トンネル周辺の見どころについて、バス停から徒歩約5分と案内されています。
ただし、島内の路線バスは運行時期によって時刻表が変わります。
往路だけでなく、帰りの便も事前に確認しておきましょう。
車で訪れる場合
車の場合は、大島一周道路から泉津地区の旧道へ入って向かいます。
周辺には道幅が限られる場所もあり、目的地に近づいたからといって、どこでも安全に停車できるわけではありません。
運転中に切り通しを探しながら急に減速したり、道路上で停車したりせず、事前に地図で入口の位置を確認してください。
駐車場について
泉津の切り通しについて、専用駐車場の場所や駐車可能台数を明示した公式情報は確認できていません。
そのため、路肩や空きスペースを駐車場所として案内することはできません。
現地では道路標識や交通ルールを優先し、駐車できる場所が確認できない場合は、無理に車を停めないようにしましょう。
また、施設として定められた標準見学時間も確認できていません。
長時間の滞在を前提とせず、周囲の状況を見ながら安全に景色を観察することが大切です。
伊豆大島を1泊2日で巡る予定がある方は、島全体の旅行計画もあわせて参考にしてみてください。
⑤ 見学するとき、何に注意する?
泉津の切り通しは、観光客のためだけに整備された公園ではありません。
地域の道路や自然の中にある景観だからこそ、訪れる際にはいくつか注意しておきたいことがあります。
道路の中央で撮影しない
切り通しのある旧道には、車両が通行する場合があります。
写真を撮るために道路の中央に立ったり、三脚や荷物で通行を妨げたりすることは避けましょう。
周囲を確認し、通行の妨げにならない安全な場所から見学してください。
階段と木の根に注意する
階段には段差があり、周囲には土や落ち葉、苔などがあります。
特に雨の日や雨上がりは、足元が滑りやすくなる可能性があります。
歩きやすい靴を選び、無理に階段を進まないようにしましょう。
また、写真を撮るために木の根へ登ったり、斜面に足を掛けたりすることも避けたいところです。
大きな木の根は、この場所を特徴づける大切な景観の一部です。
道の先や周辺の敷地にも配慮する
切り通しの周辺には、地域の生活空間があります。
階段の先まで自由に散策できる観光ルートとは限りません。
私有地や立入禁止の場所へは入らず、現地に案内表示がある場合は、その内容に従ってください。
また、大きな声で騒いだり、住宅の出入口付近で長時間滞在したりすることも控えましょう。
泉津の切り通しは、写真を撮るためだけの場所ではありません。
人が通ってきた道であり、今も地域の暮らしの中にある場所です。
そのことを忘れずに、静かに景色を楽しみたいものです。
⑥ 小さな道から、島の暮らしを見る
二本の巨木と、その間に続く階段。
泉津の切り通しは、写真だけでも印象に残る場所です。
けれど、かつて地域の子どもたちが保育園へ通うために、住民が協力して切り開いたと伝わる話を知ると、この景色の見え方は少し変わります。
木の根だけではなく、その間を通る階段にも目が向く。
不思議な景色の中に、人々の暮らしが重なって見えてくる。
もちろん、詳しい歴史のすべてがわかっているわけではありません。
それでも、ここが人のためにつくられた道だったという話は、この場所を理解する大切な手掛かりになります。
写真を撮るために訪れる場所にも、誰かの暮らしがあった。
泉津の切り通しは、そんなことを感じさせてくれる小さな道です。
伊豆大島には、泉津の切り通しのほかにも、景色の背景を知ることで見え方が変わる場所があります。
