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伊豆大島のくさやはなぜ臭い?くさや液に隠れた島の知恵と歴史

伊豆大島のくさやはなぜ臭い?くさや液に隠れた島の知恵と歴史

2026.09.11伊豆大島グルメ伊豆大島くさや伊豆大島郷土料理郷土料理発酵食品伊豆大島くさや執筆:株式会社bliss(レンタカー事業)

はじめに|くさやは、なぜあんな匂いになった?

伊豆大島の名物として知られる、

くさや。

名前を聞いて最初に思い浮かぶのは、やっぱりあの独特の匂いかもしれません。

でも、

なぜあんな匂いの食べ物が生まれたのでしょうか。

実は、その背景には、

水と塩を無駄にできなかった島の暮らし

がありました。

今回は「どれだけ臭いか」ではなく、

なぜ、くさやが生まれたのか。

そこから見ていきます。


1|くさやは、なぜあんなに臭う?

くさやの独特な匂いは、

魚そのものから生まれるものではありません。

大きく関係しているのが、

「くさや液」

です。

くさやは、魚を発酵したくさや液に漬け、その後乾燥させて作ります。

つまり、

「もともと臭い魚」を干しているわけではありません。

魚を漬ける液と、

長く続いてきた製法によって、

あの独特の香りが生まれます。

ここだけ聞くと、

今度は別の疑問が出てきます。

そもそも、なぜそんな液に魚を漬けるようになったのか。

そこに、

伊豆大島の暮らしが関係しています。


2|始まりは、塩と水を無駄にできなかった島の暮らし

昔の伊豆大島では、

水も塩も、

今のように好きなだけ使えるものではありませんでした。

火山島である大島は地面に水が染み込みやすく、水田を作ることが難しかったとされています。

江戸時代には、

米ではなく塩を年貢として納めていた時期もありました。

つまり、

島で使える塩も貴重だった。

それでも、

海に囲まれた島では魚が獲れます。

獲れた魚を保存するためには、

干物にする。

そのために塩水を使う。

でも、

一度使った塩水を、

そのたびに捨ててしまうのはもったいない。

そこで、

使った塩水をもう一度使う。

また使う。

そうして繰り返していくうちに、

塩水が発酵し、

現在のくさや液につながったとされています。

だから、

**くさやは、

「臭いものを作ろう」として生まれたわけではありません。**

限られた水と塩を、

できるだけ無駄にしない。

その工夫を続けた結果、

後に大島の食文化として残るものが生まれた。

あの匂いの背景には、

まず、

島で暮らすための事情

がありました。


3|くさや液は、約300年受け継がれてきた

こうして生まれたとされる、

くさや液。

特徴的なのは、

毎回まったく新しい液を作って終わるものではないことです。

伊豆大島では、

くさや液が約300年にわたって受け継がれてきたとされています。

魚を漬け、

液の状態を見ながら、

また次の魚を漬ける。

そうして何世代にもわたって使い続けてきた。

製造する店や家によって、

受け継いできた液も、

塩加減や作り方も違います。

だから、

同じ「くさや」という名前でも、

すべてがまったく同じ味になるわけではありません。

**同じくさやでも、

受け継いできた味は一つではない。**

くさや液は、

ただ魚を漬けるための調味液というより、

何世代も続いてきた製造の時間そのものでもあります。

そして、

この液がどれほど大切にされてきたのかが分かる出来事が、

1986年の伊豆大島噴火のときにありました。


4|噴火のときも、くさや液は守られた

1986年11月。

伊豆大島では噴火によって、全島民が島外へ避難することになりました。

くさやを作る人たちも、当然島を離れます。

しかし、そこで問題になったのが、

くさや液でした。

長い間そのまま放置すれば、受け継いできた液の状態を維持できなくなる。

そこで製造業者は、一時的に島へ戻ることを求めました。

そして許可を受けた5人が帰島し、それぞれの店のくさや液を守ったことが記録されています。

ここで大切なのは、

この出来事を大げさな物語にすることではありません。

約300年にわたって使われてきた液を、

次の世代へ残す。

製造者にとって、

くさや液は単なる調味料ではなかったということです。

**くさや液は、

食べ物を作るための液であり、受け継ぐものでもあった。**

「臭い食べ物」として見るだけでは分からない、

くさやのもう一つの姿です。


5|くさやは、何の魚で作る?

ここでも、

一つ誤解しやすいところがあります。

「くさや」という魚がいるわけではありません。

くさやは、

魚をくさや液に漬け、

乾燥させて作る加工食品です。

原料には、

ムロアジ類やトビウオ

などが使われてきました。

つまり、

魚の名前が「くさや」なのではなく、

魚をくさや液に漬けて干すことで、

くさやになる。

前回紹介した「べっこう」と少し似ています。

べっこうも、

「べっこう」という魚がいるわけではありません。

大島には、

料理や加工方法を知ると、

名前だけ見ていたときとは少し違って見える食があります。


「魚の名前だと思っていた」という意味では、伊豆大島の「べっこう」も少し似ています。べっこうも特定の魚を指す名前ではなく、その日に使われる魚によって中身が変わることがあります。

「伊豆大島名物・べっこうは何の魚なのか見てみる」


6|大島へ来たら、一度“ちゃんと”食べてみてほしい

くさやを、

テレビで「臭い食べ物」として見たことがある。

お土産売場で見つけたけれど、

匂いが気になって手を伸ばさなかった。

そんな人もいると思います。

そして実際、

くさやの匂いはかなり独特です。

だから、

「実は臭くありません」

とは言いません。

でも、

ここまで背景を知ったあとなら、

大島で一度だけ、

ちゃんと食べてみる。

そんな選択肢が増えてもいいと思います。

水や塩を無駄にできなかったこと。

同じ液を何世代にもわたって受け継いできたこと。

噴火で島を離れたときにも、

その液が守られたこと。

そこまで知ってから目の前のくさやを見ると、

「臭いかどうか」だけではなく、

どうやってこの味が残ってきたのか

にも少し興味が向きます。

そして、

お店や売場で話を聞けそうなら、

こんなことを聞いてみるのも面白いと思います。

「このくさやは、どこのものですか?」

あるいは、

「店によって味は違うんですか?」

同じ「くさや」でも、

受け継いできた液や作り方が違う。

それを知ったあとだからこそ、

この一言にも意味があります。


海の魚から生まれたくさやとは違う形で、島の暮らしの近くにあった食材もあります。今では特産品として知られる明日葉も、昔の大島では「あしたぼ」と呼ばれ、普段の食卓に並ぶ身近な存在でした。

「昔“あしたぼ”と呼ばれた大島の明日葉を知る」


くさやだけではありません。

魚。

明日葉。

べっこう。

島で食べられてきたものを少しずつ知っていくと、

食事そのものが、

大島を知る入口になります。


くさや以外にも、伊豆大島には魚介や明日葉、べっこうなど、島の自然や暮らしとつながった食があります。旅行で何を食べようか考えている方は、まず島のグルメ全体から探してみてください。

「伊豆大島で食べたいものを探す」


島の暮らしを背景に現在まで残ってきた食は、くさやだけではありません。伊豆大島には、かつて1,000頭を超える乳牛が暮らした酪農の歴史があり、その先に現在の「大島牛乳」があります。

「一度消え、5頭から復活した大島牛乳を知る」


くさやの匂いは、

かなり独特です。

でも、

その匂いの奥には、

水や塩を大切に使わなければならなかった島の暮らしと、

何世代にもわたって守られてきた時間があります。

伊豆大島でくさやを見つけたら、

「臭いからやめておこう」

の前に、

一度だけ、

その背景を思い出してみてください。

そして、

少し気になったなら、

一度食べてみる。

それだけで、

テレビや写真で知っていた「くさや」と、

大島で食べる「くさや」は、

少し違うものになるかもしれません。

**あの匂いには、

島の事情があった。


「本場でくさやを一度食べてみたい」。そんな小さな理由から、伊豆大島への旅を考えてもいいと思います。

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